高野秀行「酒を主食とする人々: エチオピアの科学的秘境を旅する」

また高野さんのすごい本が出てきました。

タイトルが示す通り、これは酒を主食にしている人々が暮らす地域を訪ね、そこでの日常生活を調べた探検記です。本の帯に書かれている通り、私も「本当に酒を主食にしている所なんてあるはずがないだろう」と思って読み始めたのですが、正真正銘、そういう地域があると知って心底驚きました!

エチオピア南部のデラシェという地域で主食として飲まれているのは、ソルガム(モロコシ)を主原料に、モリンガやケールの一種の葉の粉を混ぜて作ったにごり酒。作るのには大変な手間と時間がかかります。アルコール分は概ねビール程度で、これを大人1人あたり1日に5リットル程度飲むのだそう。

デラシェでは子供でもこれを飲んでおり、なんと病院の病室でも飲まれているとのレポートです。医師らによると、この地域ではアルコール過剰摂取によると思われる健康上の問題は発生していないのだとか。

現代では世界中が隅々まで調べ尽くされてしまい、もう驚くようなことはそうそうないと思っていました。しかし、興味と目の付け所によってはいくらでも驚異が隠されていることがわかります。

高野秀行, 酒を主食とする人々: エチオピアの科学的秘境を旅する, 本の雑誌社 (2025)