「ウィキッド」読みました

ミュージカル「ウィキッド」のポスターをよく見かけますが、恥ずかしながらどんな話なのか知らずにいました。微笑んでいるような緑の肌の人物に、白い衣装のもう一人が何か囁きかけている、あれです。

今度娘と観に行くという妻から、「オズの魔法使い」に登場する魔女の話だと聞いてちょっと気になっていました。沢山ある続編も含め「オズ」シリーズは、子供の頃大好きだったからです。そんな時、偶然にも書店で見つけたのが、ポスターと同じ表紙で出ていた原作です。さっそく読んでみました。以下にはネタバレ的な要素もありますのでご注意を。

この「ウィキッド」は「オズ」シリーズとは異なる作家によって書かれたスピンオフ作品で、悪役の「西の悪い魔女」から見た物語になっています。児童文学かと思っていたら、完全に大人向けの作品です。カラフルな魔法の国が描かれたオリジナルの「オズ」シリーズと比べてファンタジーの要素はごく控えめで、貧困・差別・圧政・戦争などの不安が漂うオズの国で進行する物語は、20世紀前半の現実世界が舞台であるような錯覚がしてきます。

映画「ジョーカー」のようなヴィラン誕生秘話的な物語を予想していたのですが、これもはずれでした。悪い魔女は複雑な事情を抱えながらも普通の悩める人間であって、さあいつ派手に悪者になるのだとやきもきしてしまいました。それでもオリジナルの話での結末になってしまう道筋が、多少飛躍はありながらも面白く語られています。

物語でも現実世界でも、悪者を作り出して対立の構図を描けば話は分かりやすくなります。「ウィキッド」を読みながら、ついそういう展開を期待してしまっていたことに気がつきました。現実世界の歴史では、そんな単純化が不幸な結果を生むことがありましたが、実際はそう単純でないことも多いものです。相手から見たストーリーを考えるというのも良いことかもしれません。

さて、オリジナルのシリーズのファンならば、本作での色々な設定はすごく楽しめるはずです。ギャップが大きすぎる人物もいますが。例えばオズの大魔法使い。たいしたことないイカサマ師だったはずですが、「ウィキッド」では強力な独裁者として君臨しているのにはびっくりしますね。その他にも・・・いや、これ以上はやめておきましょう。