歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは「サピエンス全史」の著者です。彼の最新作”Nexus – A Brief History of Information Networks from the Stone Age to AI” を読みました。3月には日本語版も出ますが、これはハラリの人気を反映してか、かなり早いのではないかと思います。

期待をはるかに上回る素晴らしい本でした。
ハラリによれば、ホモサピエンスが繁栄を築くことができた理由は、大勢で協力できる能力に秀でていたことです。これが「サピエンス全史」の主なテーマの一つでした。そして今回の本では、ホモサピエンスがそのような能力を発揮できるのは、多くの個体を協働させるために情報を上手く使うことができるためだと述べます。特に、階級・国家・金・神といった”intersubjective”な概念(複数の人が認めることで成立する概念)に関する情報に敏感であることが重要なポイントです。しかしその性質は真偽不明な情報や嘘に振り回されやすいという弱みも同時に生み出します。集団を動かすのは情報の正確さや真実性ではなく、上のような概念に関する「物語」です。
本作はこれを踏まえて物語、印刷、インターネットなど様々な情報処理技術を切り口で人類史を分析し、ネット社会やAIの台頭する未来がはらむリスクやそれに備える手立てについて考察していきます。
そういえば、最近のいくつかの選挙についても、ここで展開されているような視点で考えて咀嚼できたように思います。
ハラリの本の素晴らしいところは、全編通して難解な文章がほとんど登場せず、通常の会話のように平易に語ってくれることです。これまでの作品も近いうちに読み返してみたいと思います。